写生で磨く、画力と感性
日本画は、古来の素材?技法?様式を基盤としつつ、時代とともにその表現を多様化させてきました。本コースでは、物事の本質を描き出す写生を土台に、岩絵具?墨?膠?和紙?金属箔などをはじめとするユニークな素材の取り扱いを学びながら、従来の日本画の枠にとらわれない表現を追求しています。たとえば演習では、日本の古典絵画をヒントに現代の問題意識から作品を制作する一方、東北の自然や市街地でのフィールドワーク、私たちの今日の生活にあふれているさまざまな画像からも作品を発想しています。従来の日本画の枠におさまらない演習のプログラムと、写生で磨いた画力と感性で、未来の日本画を追求しませんか?
Feature
コースの特色
フィールド(写生)を重視し、観察力と画力を鍛える
写生とは、見たものをありのまま描くだけでなく、物事の本質に迫ろうとする姿勢を意味します。大学が位置する山形の自然豊かな環境は、その格好の舞台です。日本画コースでは、写生を軸に観察力と画力を鍛え、その上で独自性を磨くことを重視しています。その結果、在学中から公募展で受賞するなど、対外的な評価を生み出しています。
エキシビジョン(展覧会)を学生主体で企画?運営し、展示技術を学び、思考を磨く
日本画の技術のみならず、作品を発表するための技術を学び、思考を磨くカリキュラムが組まれています。2年次での学内展、3年次での学外展、4年次での卒業制作展と、段階的に規模の大きな展覧会を学生主体で企画?運営するのです。基礎的な展示技術の取得はもちろん、作品を社会に対し発信することの意義を知り、プレゼンテーション能力やコミュニケーション能力などの思考も磨きます。
ローカル(地域交流)を通し、表現力と精神力を育む
東北という場所は、自ずと目の前の雄大な環境に向き合わせてくれます。日本画コースでは、学内での授業はもちろん、課外での実践的なプロジェクトを通し、日本画によって山形をはじめとする東北地域へ深く入り込む時間が設けられています。そして、そこで得た体感や思いが、表現力と精神力を育むことにも繋がっていきます。
スタディ(研究)により、自らの制作と思考を深める
日本画をはじめとする美術?芸術は、歴史から学び、現在を真摯に見つめることで発展してきました。日本画コースでは、日本画の素材?技法はもちろん、歴史?理論を学ぶための授業が1年次から設けられています。それらの学習から、一人一人の関心に応じた研究を深めていくことで、いま、この社会で何を表現することができるのか追求していくのです。
Curriculum
授業紹介
「写生」を基礎として日本古来の素材?技法?様式を学ぶことをスタートに、自分ならではの主題?モチーフを段階的に探求しつつ、展覧会等を通して日本画を地域?社会に対して開いていく実践的なカリキュラムが組まれています。
1年次
日本画の土台を築く
日本画の出発点?写生を基本に、岩絵具?墨?膠?和紙など、独特の素材の取り扱い、技法?手順の取得を目的とする演習、歴史?概念を深める講義を通し、画力と思考の土台を築きます。
〈 講義 〉 | 〈 演習 〉 | 〈 実践 〉 | |
---|---|---|---|
前期 |
|
|
|
後期 |
|
|
2年次
古典絵画の技法?素材?様式を学ぶ
日本の古典絵画の技法、素材(板?絹)、様式(掛け軸?屏風?衝立など)を学ぶ演習によって、日本の伝統的な絵画の建築?空間との関係を考察し、現代ならではの表現を試みます。
〈 講義 〉 | 〈 演習 〉 | 〈 実践 〉 | |
---|---|---|---|
前期 |
|
|
|
後期 |
|
|
|
3年次
東北の自然と現代の社会から、自己の表現を探求する
フィールドワークや画像を用いて描く選択演習によって表現をさらに深めるとともに、自身にとっての日本画を問い、自己の表現を探求します。また、学外の悠創館でのプレ卒展を企画?運営します。
〈 演習 〉 | 〈 実践 〉 | |
---|---|---|
前期 |
|
|
後期 |
|
|
4年次
4年間の集大成に挑戦、社会に発信する
自身の将来を見据え、芸術の社会的意義を考えながら、今ここでしか作ることのできない表現に挑戦します。そして、その成果を学生自身が主体となって企画?運営する卒業制作展で発表します。
? | 〈 演習 〉 | 〈 実践 〉 |
---|---|---|
前期 |
|
|
後期 |
|
活動 Pick Up!
写生
日本画の制作は、「写生」を通して自然風景に向き合い、対象を把握することから始まります。厳しくも豊かな東北の自然に身を置き、写生で「物事の本質を描き出す画力」を追求します。
岩絵の具作り
日本画は、岩絵具、膠(にかわ)、墨、和紙、箔などをはじめとした自然素材からできています。鉱物を砕き、岩絵具を作る体験や、紙すき職人、表具師、筆職人らによる実演から、自然と直に触れながら、日本画の素材を学びます。
チュートリアル「東北画は可能か?」&「みちのく現場考」
日本画コース教員が主体となって行っているチュートリアル(課外活動)では、「東北」という地域?環境?歴史からの学びを通した、学内にとどまらない活動が繰り広げられています。
勝因寺本堂襖絵?天井絵制作|地域連携プロジェクト
山形市の古刹、勝因寺創建から750年目となる2026年に合わせ、本堂の襖絵の制作を行っています。また、毎年2年次の授業課題として制作した板絵を本堂奥の天井に設置しています。
Career
進路
Professor
教員紹介
金子 朋樹 コース長
Kaneko Tomoki
准教授/日本絵画、技法材料研究
写生から、ここでしか描くことのできない表現を切り開く
日本絵画の歴史上、写生という方法はとても重要です。江戸時代には写生という言葉が見られ、師から弟子へ受け継がれる粉本教育の一方、絵師たちの数多の写生に支えられてきた側面があります。明治以降の日本画史においても、写生という概念は切り離すことはできないのです。
情報が開かれている昨今、様々なメディアは時間と空間を拡張し、私たちにあらゆる方法で情報を届けてくれるようになりました。それらの産物によって私たちは利便性のある生活を送ることができています。しかしながら、合理的なメディアが数多あるにも関わらず、なぜ私たちは「描く」というようなアナログとも言える手法を選択するのでしょうか。私はこの時代だからこそ、自らの目と手を大切にして描くことの姿勢、また対象の本質に迫ろうとする姿勢が大きな意味を持つと考えます。
描く対象が目前にある場所に身を置いて、体感を得ながら“手で考える”。写生という方法を通して想いや考えを作品と言葉で伝える力を身につけ、日本画のフィールドで今ここでしか描くことのできない表現に挑戦しましょう。